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思い出の扉


■奥 田 晶 子 / AKIKO OKUDA■


TITLE

思い出の扉



DATA

RELERSE : 2002年2月
PRCD-1670

定価 \2,500(税抜価格\2,381)

1992年9月
パリ・マルカデ・スタジオにて録音
DISCOGRAPHY


誰もいない海

澄んだ泉のほとりで

シバの女王

帰り来ぬ青春

愛する時

人生は過ぎゆく

01
悲しみのベニス
(3:12)
02
高層ビルの子供
(2:57)
03
6つの色の物語
(3:18)
04
思い出の扉
(6:20)
05
シャンソン
(3:51)
06
ひとり星の上で
(4:03)
07
(4:09)
08
くちびるの端で
(2:16)
09
果てしなき愛
(3:21)
10
愛につつまれて
(3:57)
11
風は想い出
(3:54)
12
もし
(3:33)
13
アリーヌ
(3:19)
衝撃のパリ録音デビュー・アルバム!
ニュー・マスタリング・ヴァージョン

「思い出の扉/奥田晶子」PRCD−1670に寄せて


1990年(名古屋)、1991年(神戸)と二つのシャンソン・コンクールを立て続けに制覇したあと、ビクターと契約した奥田晶子は、1992年9月、シャンソン界の第一人者、岩間南平(編曲、ピアノ)を伴い、パリのトップ・ミュージシャンたちをバックにパリのスタジオで録音、翌年発売されたこのアルバムは日本のシャンソン・ファンに大きな衝撃を与えました。

水晶のように透明感あふれる美しい声で、好感の持てる初々しい歌い口は彼女の師とした、歌手で詩人の古賀 力の影響を多分に感じます。古賀さんは「ふるさとの山」、「時は過ぎて行く」等の名訳でも知られていますが、東京赤坂に「ブン」という名物シャンソニエを持ち、奥田晶子はそこで10年ほどの修行を積んでいました。「ブン」には奥さんの芳賀千勢子さん、昨年亡くなられた大御所、くどうべんさん等正統派でハイブローな歌い手が常時出演し、奥田は自然にシャンソンのエッセンスを吸収したのだと思います。

二つのグランプリ受賞曲「ひとり星の上で」(原曲ジルベール・ベコー)、「悲しみのベニス」(原曲シャルル・アズナヴール)を始め、「高層ビルの子供」、「6つの色の物語」(原曲は双方ともに、ガラス細工のようなデリケートな感性を持味とした女性歌手ジャンヌ・マリー・サンスのオリジナル曲)、「シャンソン」(原曲ジョルジュ・ムスタキ、岩間南平のアレンジが素晴らしい)、「くちびるの端で」(原曲バルバラ)と、古賀さんの訳詞を実に6曲も取上げています。

聴きどころは何と言っても、タイトル曲の「思い出の扉」、フランスのロック・シンガー、ジャン・ジャック・ゴールドマンの代表作。父と息子の対話をテーマにした曲ですが、奥田は、父と娘に置きかえ、巣立ちの時を向え今旅立とうとする我が娘を目の前にして、無言で惜別する父親の切情を万感込めて歌い上げます。私のコラムでも述べましたが、奥田晶子の訳詞家としてのデビュー曲でもあります。彼女はこのアルバムで「愛につつまれて」(「再会」でお馴染みのニコレッタのヒット・ナンバー)の訳もつけました。

録音を終えた後、岩間南平氏をして“他のシャンソン歌手ではこういう歌い方は出来ない”と思わず膝を打たせたシーンが思い出されます。

もう一つ印象の深かったシーンは、前出の「くちびるの端で」と「涙」(原曲ジャック・ブレル)を録音した時のことでした。いつものことながらオーケストラのメンバーをさんざん待たせてスタジオに遅れてやって来た奥田は、案の定、南平さんにきついお叱りを頂戴。奥田晶子のすごさは、それでもケロッとして、オーケストラをバックに一発で歌い上げてしまったことです。ストリングスの皆さんは弦と足をふんだんに使って大拍手喝采。パリのミュージシャンたちはこの後、奥田晶子を日本から来た歌手の録音といったいい加減な態度でなく、真剣に音楽に取り組み出したことにも驚きでした。

一度でOKテークを録った(通称イッパツドリと呼んでいますが、これを出来る歌手は非常に少ない)上記2曲はとりわけ見事な出来ばえです。そして私の推薦曲はラストに収めた「アリーヌ」、リチャード・クレイダーマンも得意とするこの甘いメロディーを歌う奥田晶子は、10年後の今日を彷彿させる見事な歌唱力の片鱗を十二分に見せてくれました。

K2 24ビット方式のニューマスタリング(XRCDとまったく同じプロセスの製法)による録音サウンドの改善も特筆ものです。ヴェールが一枚も二枚もはがされたようなサウンドはヴォーカルが前面に浮び出て、その生々しさは、従来と同一音源とはとても思えません。

最後に、オーディオ評論家、斉藤宏嗣先生からこのリニューアル盤の発売にあたり音楽之友音社発行「ステレオ」2002年4月号の録音評に優秀復刻盤として、以下のコメントと共に9.6点の高評価をいただいたことをご紹介します。

“92年に収録され、すでに発売されているものだが、本ディスクは、全面的にJVCのxrcdの制作工程に添っている。通常盤に対し圧倒的なレンジ感と解像度を示し、最上の最新レコーディング、として紹介しても過言ではない。”
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